2021/09/09 22:00

ファッションはもう終わった。
最近アパレル関係の知人や友人から、そんな言葉を耳にする。

単に消費者として着ることを楽しんできた自分からすると、そもそもファッションに始まりも終わりも無い。
ただ、毎日服を着て生活する、その行為に何を持たせるか?たったそれだけのことで、裸で生活できない限り、その問いかけは永遠に続く。

私の答えは、自己表現、マイブーム、発散、創造など、常に変化しているけれど、間違いなく思うのは、もはや消費が着る行為の目的ではない、
ということ。そして人生の中で着た服の数、鏡に向かった回数の蓄積が、今の自分がいる地点への軌跡であり、
私という人間のイメージを作ってきたのだろうと思う。

それが成功だったか失敗だったかはわからないけれど、
着ることは自己実現のひとつの手段であり、到達したい地点へ行くためのある種の創造行為で、それをスタイルと呼ぶとしたら、
そもそも着ることに興味がないと言って、毎日同じデザインの服を好んで着ることも、ひとつの自己表現のスタイルかもしれない。

どう生きるために、何を着るのか?
そのヒントは、もはや新しさだけに存在するものでもなくて、何が古くて何が新しいか?どこが始まりでどこが終わりか?
そういう時間軸とは別の軸の上に、今私たちは立っている。
毎年追い求めてきたトレンドや、10年ごとに繰り返されるリバイバル、そんなルールに地球環境が追いつかない現代において、
いつの服をどう着るかは、完全に自由であると同時に、深刻な課題でもあるのだ。

生産と消費を喚起するファッションインダストリーのビジネス構造に終わりがあったとしても、生きるための装いに終わりはない。
毎日と人生を、着ることで創造してきたファッション史に残るスタイルアイコンたち、
ファストファッション以前の、洋服にアートやクラフトスピリッツが籠もっていた時代のアイテムの数々。
これまで人間が生活の中で蓄積してきた、着るというクリエイティビティを、探し、見極め、選び、共有し、追求し、考え、発信する、
そんなプロジェクトを始めてみようと思う。


ファッションは終わらない
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